狼少年、拾いました。
 「ははは!ないない、あんたみたいな悪人はいねぇよ。俺、何回かそういう目には遭ったから人を見る目は養われてるんだぜ?」

 「……。」

 悪人じゃないなら何であんなに村の人はわたしが嫌なのかしら。

 この人の人を見る目とやらが単に信用できないだけかしら。 

 「ん?どうした?」

 「いや別に。ちょっと考えてたのよ、まだ傷が開かないっていう保証はないから外へ出るのはもうちょっと待った方がいいかなって。」

 ミェルナの答えにレスクは口を尖らせた。

 「えーなんでだよ!大丈夫だって、お前が思ってるより俺は丈夫だぜ?」

 「あんたが思ってるより私はちゃんと物を考えてるの。さっき半分も動けないって言ってたじゃない。それにもうすぐ夕方なんだし…とりあず体はお湯で拭けるようにするから、ご飯、冷めない内に食べたらどう?」

 ご飯と聞いてレスクは狼のような瞳を輝かせた。

 「あ!そっか飯!有り難くいただきます。」

 食事が置かれた盆の前に吸い込まれるように座るレスク。

 (意外と子供っぽいのね。)

 それに自分の作った物をこんなに美味しそうに食べてくれることがこれほどうれしいことだとは思わなかった。

 はっきりとは顔には出さないが嬉しそうに煮込みを口に運ぶレスクを見て、ミェルナは自分の口元がほころんでいくのがわかった。

 

 「なんでお前なんだよ。」

 あぐらをかいて地下室の真ん中に座ったレスクは背後のスティーヌにぼやいた。
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