狼少年、拾いました。
 「荷物を置いてきな。」

 刃物を持った男が三人、木立の間の暗闇からぬるりと現れた。

 (盗賊……?)

 何してる、と父がゼーラに荷を下ろさせながら、庇うように前に回って背中に隠した。

 それが却って賊の興味を引いてしまったのか、真ん中の男がグイッと距離を詰めてゼーラの顔に松明をかざした。

 顔を見てヒューッと口笛を吹く。

 「こいつはまたべっぴんがいるなあ!すまんがこの嬢ちゃんももらってくぜ、俺たちも金に困ってんでな。」

 一番右の男が毛深い腕でゼーラの手首を掴んだ。

 恐怖で暴れだす娘を見て血相を変えて父親が声を張り上げる。
 
 「金になるものならある、見逃してくれ!」

 「出任せ言ったって効かねぇよ、」

 そう言って下ろさせた荷を担ぎ、森の奥へ消えようとした。

 「やだ!父さん!」

 ゼーラが必死に抵抗しながら叫んだその時。

 森の闇の中から何かが矢のように飛び出してきた。
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