あと1秒だけ、ボクの隣で。
『葉くん、私ね。
実はやり残したことがあって、この世界に留まってるの』
『やり残したこと?』
『そう。高校生の今しか味わえない、青春。
それが私のやりたかったこと』
せいしゅん。
セイシュン
青春。
僕の心に、奇妙なほど絡みつくその言葉。
そして、僕には一番程遠いものだった。
だから正直、卒業式を迎えた今、可奈子の望んでいた青春の日々を与えてやれたのか僕には全然、自信なんてないし。
そもそも可奈子の望みを叶えてやるなんて一度たりとも言った覚えはない。
それでも可奈子は毎日のように僕の傍にいたし、いつも楽しそうだった。