あと1秒だけ、ボクの隣で。
しばらく黙りこんだままでいると、可奈子はそんな僕に構わず続けた。
「葉くんに一度怒られたことあるでしょ?
不審がられるから人前で話しかけるなって。
でもあれ、わざとだったんだ」
「…わざと?」
「葉くんを誰にも取られたくなかった。
だってもし本当のお友達ができて…彼女もできちゃったら、葉くん私のこと見えなくなっちゃうんじゃないかって怖かったの。
そしたら私、また一人ぼっちでしょ?
前からずっと寂しかったけど、葉くんと一緒に過ごしていくうちにいつの間にか私、すごく欲張りになってた。
いつも葉くんのことばっかりで、葉くんを想うと死んでるのに胸が苦しくって。
幽霊のくせに、独占欲の塊みたいになってさ。
ばかみたいだけど、でも、葉くんのこと大好きだったよ。
きっと、誰よりも。死んでるけど、生きてる人よりも、大好きだったよ」
可奈子が笑う。
まるで花が咲くように。
あるいは散っていく間際の美しさのように。
僕は、何だか無性に可奈子に触れたくて腕に手を伸ばした。
だけどそれはすり抜けて、空を掴むだけだった。