あと1秒だけ、ボクの隣で。



「…葉くん?」



可奈子が心配そうな声で僕を呼んだ。


わかっていたはずのことなのに、僕は何を動揺しているんだろう。


可奈子は幽霊で、可奈子は死んでいて、可奈子は存在しないはずのもので。


可奈子は、可奈子は…。



「…嫌だ」


「え?」


「何でそんな…最後のお別れみたいなこと言うんだよ」


「葉くん…」


「僕は嫌だ!だってお前は…
可奈子は、ただの普通の女子高生で、

生きてる奴なんかより笑顔が生き生きしてて、

バカで単純でそのくせイタズラ好きで、

僕は振り回されてばっかりだったけど…。

そんな可奈子と過ごしてる一分一秒が、本当に、本当に、楽しかったんだ。

僕はまだ、まだ可奈子と……」



泣きたくないのに、涙が止まらない。


一瞬、一瞬、可奈子の姿を見逃したくはないのに、涙が邪魔をする。


息もうまくできなくて、嗚咽ばかりが漏れる。



< 8 / 19 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop