あと1秒だけ、ボクの隣で。
「…葉くん?」
可奈子が心配そうな声で僕を呼んだ。
わかっていたはずのことなのに、僕は何を動揺しているんだろう。
可奈子は幽霊で、可奈子は死んでいて、可奈子は存在しないはずのもので。
可奈子は、可奈子は…。
「…嫌だ」
「え?」
「何でそんな…最後のお別れみたいなこと言うんだよ」
「葉くん…」
「僕は嫌だ!だってお前は…
可奈子は、ただの普通の女子高生で、
生きてる奴なんかより笑顔が生き生きしてて、
バカで単純でそのくせイタズラ好きで、
僕は振り回されてばっかりだったけど…。
そんな可奈子と過ごしてる一分一秒が、本当に、本当に、楽しかったんだ。
僕はまだ、まだ可奈子と……」
泣きたくないのに、涙が止まらない。
一瞬、一瞬、可奈子の姿を見逃したくはないのに、涙が邪魔をする。
息もうまくできなくて、嗚咽ばかりが漏れる。