次期社長と甘キュン!?お試し結婚
「晶子こそ、どうしてなんだ?」
質問に、質問で尋ね返されて私は困った。何故かと問われたら、私もはっきりとした答えがでない。でも、誰とでもキスなんてしない。直人だから、なのだ。それは私が直人の事を――
「好きに……なりたいから」
結局、私が口に出せた回答はそれだった。少しだけ直人の顔が歪む。ここで、好きになった、と言えば直人の望むように、条件を満たして結婚できるのに。
彼が望んでいるのはそれだけなのに。事情も分かっていながら、それでも私は言えなかった。
頬から伝わる温もりをじんわりと感じていると、わざとか意図せずにかは分からないが、直人の指先が耳に触れて、くすぐったさについ身を捩りそうになった。
目を細めると、今度は頬にそっと唇が寄せられて、私は固まってしまった。
「俺は、今は晶子にしかこんなことしないし、結婚するんだから、これから先も晶子だけだよ」
先ほどの質問の答えのつもりなんだろうか。こんなことを面と向かって言われて、私は照れよりも切なくなった。
社長になるために、社長の出した条件を叶えるために、好きでもない私にそこまで言ってくれる直人が。それから、そっと腕を伸ばして直人の頭に触れる。
「調子が悪いのに、長居してごめんね。ちゃんと休んでね」
そう言うと彼は腕の力を緩めて、ゆっくりと私を解放してくれた。そして、今度こそ私は部屋をあとにする。私も、直人もそれ以上なにも言わなかった。
質問に、質問で尋ね返されて私は困った。何故かと問われたら、私もはっきりとした答えがでない。でも、誰とでもキスなんてしない。直人だから、なのだ。それは私が直人の事を――
「好きに……なりたいから」
結局、私が口に出せた回答はそれだった。少しだけ直人の顔が歪む。ここで、好きになった、と言えば直人の望むように、条件を満たして結婚できるのに。
彼が望んでいるのはそれだけなのに。事情も分かっていながら、それでも私は言えなかった。
頬から伝わる温もりをじんわりと感じていると、わざとか意図せずにかは分からないが、直人の指先が耳に触れて、くすぐったさについ身を捩りそうになった。
目を細めると、今度は頬にそっと唇が寄せられて、私は固まってしまった。
「俺は、今は晶子にしかこんなことしないし、結婚するんだから、これから先も晶子だけだよ」
先ほどの質問の答えのつもりなんだろうか。こんなことを面と向かって言われて、私は照れよりも切なくなった。
社長になるために、社長の出した条件を叶えるために、好きでもない私にそこまで言ってくれる直人が。それから、そっと腕を伸ばして直人の頭に触れる。
「調子が悪いのに、長居してごめんね。ちゃんと休んでね」
そう言うと彼は腕の力を緩めて、ゆっくりと私を解放してくれた。そして、今度こそ私は部屋をあとにする。私も、直人もそれ以上なにも言わなかった。