次期社長と甘キュン!?お試し結婚
「ねぇ、社長代理見た?」
「見た見た!」
「私は見てないけど社長の孫で若くてイケメンなんでしょ?」
「ずっと海外支社にいたけど、社長の復帰の目処がたたないからって戻ってきたらしくて」
「ってことは、次期社長? 独身?」
次の日、会社に行くといつの間にか現れた宝木直人の存在で話題は持ちきりだった。これは想定外で、お陰で彼と話すどころか、近づくことさえ、できそうもない。
そういえば、見合いの席で、ヨーロッパにある海外支社にずっと勤務していて、今回の社長の入院があって戻ってきたとは聞いていたが、まさか社長代理というとんでもない肩書きを引っさげていたとは。
なんでも彼は、ヨーロッパで有名な化学品工業が開発した新エネルギーを、我が社を通して日本に輸入するという段取りを取り付けたらしい。
まだ準備段階で、いくつもの手続きを踏まなければならないが、これは偉業だ。もしも実現すれば、日本の産業に大きな影響を与えるのは間違いない。環境に配慮したエネルギー分野においては日本よりもあちらの方が進んでいる。
そういうわけで、孫だからという理由ではなく、十分に社長の後釜になれそうなの実力の持ち主なのは、はっきりしていた。しかし、私にとって大事なのはそこではない。
どうしたものか、と思いながら気づけば昼休みに突入している。目の前の仕事を一区切りさせたところで携帯が鳴った。見知らぬ番号だったので一瞬躊躇ったが、とりあえず出てみる。
「はい、三日月です」
『俺だ』
「たっ!」
向こうが名乗る前につい声をあげてしまい、私は辺りを見渡しながらその場に身を潜めた。
「宝木さん? どうして私の番号を?」
『君の叔母に聞いた』
本人の許可なしに教えなくても。まぁ、私も連絡を取りたかったし、教えられて困るものでもないが。
「わざわざ、どうされたんです?」
『昨日の返事を聞きたい』
単刀直入とはこのことだ。しかし、なにも電話でなくても。
「いえ、あのさすがに電話では」
『分かっている。自分も本題から入りすぎたしな。今日、仕事が終わったら、ちょっと付き合ってほしいんだ』
分かっている、と言っておきながら、相変わらず向こうのペースでどんどん話が進められた。ただ、私もちゃんと話したかったのでちょうどいい。了承の意を伝え、手短に電話を切った。
「見た見た!」
「私は見てないけど社長の孫で若くてイケメンなんでしょ?」
「ずっと海外支社にいたけど、社長の復帰の目処がたたないからって戻ってきたらしくて」
「ってことは、次期社長? 独身?」
次の日、会社に行くといつの間にか現れた宝木直人の存在で話題は持ちきりだった。これは想定外で、お陰で彼と話すどころか、近づくことさえ、できそうもない。
そういえば、見合いの席で、ヨーロッパにある海外支社にずっと勤務していて、今回の社長の入院があって戻ってきたとは聞いていたが、まさか社長代理というとんでもない肩書きを引っさげていたとは。
なんでも彼は、ヨーロッパで有名な化学品工業が開発した新エネルギーを、我が社を通して日本に輸入するという段取りを取り付けたらしい。
まだ準備段階で、いくつもの手続きを踏まなければならないが、これは偉業だ。もしも実現すれば、日本の産業に大きな影響を与えるのは間違いない。環境に配慮したエネルギー分野においては日本よりもあちらの方が進んでいる。
そういうわけで、孫だからという理由ではなく、十分に社長の後釜になれそうなの実力の持ち主なのは、はっきりしていた。しかし、私にとって大事なのはそこではない。
どうしたものか、と思いながら気づけば昼休みに突入している。目の前の仕事を一区切りさせたところで携帯が鳴った。見知らぬ番号だったので一瞬躊躇ったが、とりあえず出てみる。
「はい、三日月です」
『俺だ』
「たっ!」
向こうが名乗る前につい声をあげてしまい、私は辺りを見渡しながらその場に身を潜めた。
「宝木さん? どうして私の番号を?」
『君の叔母に聞いた』
本人の許可なしに教えなくても。まぁ、私も連絡を取りたかったし、教えられて困るものでもないが。
「わざわざ、どうされたんです?」
『昨日の返事を聞きたい』
単刀直入とはこのことだ。しかし、なにも電話でなくても。
「いえ、あのさすがに電話では」
『分かっている。自分も本題から入りすぎたしな。今日、仕事が終わったら、ちょっと付き合ってほしいんだ』
分かっている、と言っておきながら、相変わらず向こうのペースでどんどん話が進められた。ただ、私もちゃんと話したかったのでちょうどいい。了承の意を伝え、手短に電話を切った。