次期社長と甘キュン!?お試し結婚
 でもそうか、直人だって最初からなんでも仕事ができたわけでもないんだ。今の直人があるのは、必死に努力してきたからなんだ。

 出会った頃、当たり前のように、社長の孫だから、と色眼鏡で見てきたことを今更ながらに反省する。力が抜けたような表情で話す直人は年相応で、そんな直人の顔をじっと見つめた。

「正直、じいさんに言われたことは当たってた。どこかで俺は社長の孫だから、なんて自惚れてたところもあって。で、数年経ってじいさんから会社に呼び戻しがあったけど、なんか悔しくて、素直に応じられなかったんだ。だから、戻るにしても海外支社に希望を出して……」

 懐かしむような瞳で、時折頭を掻きながら話す直人に私はなんだか微笑ましくなった。

「社長はそんな直人の行動も、全部、見越していたと思うよ」

 直人が他社に数年行っただけで満足するような人ではないのを、社長は私よりもずっと分かっているはずだ。変に真面目でまっすぐで――

「だろうな。俺は結局、じいさんの思惑通りに動いていたらしい」

 今の話を聞いても、社長が直人のことを考えて、ちゃんと思っているのが伝わってくる。それなのに、どうして私と、三日月今日子の孫と結婚しなければ、なんて条件を出したのだろうか。

 こんなにも直人は社長の、祖父のために頑張っているのに。

「直人は社長にとってすごく立派な孫だよ。やっぱり、直人が社長の跡を継ぐべきだと思う!」

 つい熱くなってしまって告げると、目を丸くした直人と視線が交わる。
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