次期社長と甘キュン!?お試し結婚
 仕事で会っているのを密会と囃し立てられ、親しそうにしている二人の写真も掲載されている。腕を組んでいるわけでもなく、恋人同士のような雰囲気ではないが、直人も朋子も笑顔だ。

「どうせ朋子が出る映画がもうすぐ公開だから話題作りだろ? 朝のワイドショーでも、事務所を通してすぐに否定したって言ってたし」

「詳しいね、航平」

 姉の私よりもはるかに事情に通じている航平に思わず苦笑する。しかし営業マンである彼はそういう情報には敏い。そこで、ビールとお肉が運ばれてきたので、話題を一時休止しグラスをあわせる。

 なにも言わずに航平がトングを持ったので、そのまま焼くのは任せることにした。焼いてもらえるのは楽だ。

「マンションにいて、マスコミとか大丈夫なのか?」

「あ、今はホテルにいるんだ」

「ホテル!?」

 タンをひっくり返しながら、素っ頓狂な声をあげた航平に私は簡単に事の経緯を説明した。

「ホテル暮らしなんて慣れないから落ち着かないよ」

 軽く肩をすくめると、航平がお皿にタンを乗せてくれる。まずはレモン汁で頂こうと箸に手を伸ばした。

「なら、うちの実家に来れば? 兄ちゃんも俺も家を出てるから部屋も余ってるし。母さんと父さんも喜ぶと思うけど。必要なら会社の送り迎えは俺や母さんがしてやるし」

 いきなりの提案に私は目を丸くした。
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