次期社長と甘キュン!?お試し結婚
考えがまとまらないまま、直人が一度戻ってくる日になった。あんなに会いたかったのに、今は会うのが不安で堪らない。
どんな顔をすればいいのか、なにを話せばいいのか分からない、一緒に暮らしていてもこれだ。朋子なら数回会っただけで、きっと相手の好みに合わせた話で盛り上がれるのに。朋子なら――
深みにはまりそうな思考を振り払う。栗林さんに指定されたとおり、私は業務を終えた後、人目をしのんで社長室に向かった。そうそう社長室前に人がいることはないが。
緊張しながらノックをすると、中から返事があったので、私は深呼吸をして扉を開けた。
「元気にしてたか?」
溜まっていた書類から顔を上げて、ソファに座っていた直人がこちらに顔を向けてくれた。色々なことがありすぎて、随分と長い間会っていなかった気がするが、直人の顔色は案の定、疲れていて、あまりよくはなかった。
「私は大丈夫。直人こそ、平気?」
ゆっくりソファに近づくと、直人は栗林さんに目配せした。またすぐに戻ってきますね、と軽く挨拶をしてくれて部屋を出て行く。
気を利かせてくれたのかは分からないが、職場とはいえ二人きりになったことに少しだけ緊張した。そして直人は、書類の束を机に軽く放り投げると、おもむろに立ち上がり、私に近づいてきた。
一歩ずつ近づかれるだけで、ひどく緊張する。そして、大きな手がゆっくりと私の頬に触れた。
どんな顔をすればいいのか、なにを話せばいいのか分からない、一緒に暮らしていてもこれだ。朋子なら数回会っただけで、きっと相手の好みに合わせた話で盛り上がれるのに。朋子なら――
深みにはまりそうな思考を振り払う。栗林さんに指定されたとおり、私は業務を終えた後、人目をしのんで社長室に向かった。そうそう社長室前に人がいることはないが。
緊張しながらノックをすると、中から返事があったので、私は深呼吸をして扉を開けた。
「元気にしてたか?」
溜まっていた書類から顔を上げて、ソファに座っていた直人がこちらに顔を向けてくれた。色々なことがありすぎて、随分と長い間会っていなかった気がするが、直人の顔色は案の定、疲れていて、あまりよくはなかった。
「私は大丈夫。直人こそ、平気?」
ゆっくりソファに近づくと、直人は栗林さんに目配せした。またすぐに戻ってきますね、と軽く挨拶をしてくれて部屋を出て行く。
気を利かせてくれたのかは分からないが、職場とはいえ二人きりになったことに少しだけ緊張した。そして直人は、書類の束を机に軽く放り投げると、おもむろに立ち上がり、私に近づいてきた。
一歩ずつ近づかれるだけで、ひどく緊張する。そして、大きな手がゆっくりと私の頬に触れた。