次期社長と甘キュン!?お試し結婚
 祖母の影響か、どんなきっかけかは忘れたが、私は昔から映画が大好きだった。趣味と呼べるかどうかは謎だが、こうして空いている時間を見つけては、そのときの気分で映画を鑑賞するのが私の余暇の過ごし方でもあり、楽しみでもある。

 学生の頃から、お小遣いをためては映画を観に行き、定価ではなかなか手が出せないので、リサイクルショップを回ってビデオを買ったり。当時はDVDではなくVHSだったのが懐かしい。

 社会人になってからは、どんどんそのコレクションが増えていき、実はここに運んだ荷物の半分はDVDやVHS、気に入った映画のサントラやパンフレットなど映画関連のものばかりだったりする。

 ここに越してきてよかったな、と一番に思ったことは、このDVDたちを見やすく並べられる棚を置けることだと本気で思った。前のマンションは収納重視で選んだとはいえ、なかなか場所をとって整理が大変だったから。

 映画が始まり、そちらに集中する。私は邦画も観るが、どちらかと言えば洋画の方が好きだった。恐らく私の英語は、勉強よりも洋画を字幕で観ることで鍛えられたと言っても過言ではない。

 ニューヨークの超一等地に建てられた全米一の最高級マンションを舞台にしたこの作品は笑いあり、アクションあり、人間模様ありのなかなか楽しい作品だ。

 このマンションの造りに似通っているところもあって勝手に親近感を覚える。少なくとも前のアパートで観たときは、こんな気持ちにはならなかったな。

 そして、開始してからもうすぐ一時間になろうとしていたときのことだ。すっかり作品にのめり込んでいた私は、いきなり点いた電気に度肝を抜かれ、体を震わせた。

「どうして電気を消してるんだ?」

 目をしぱしぱさせながら、入口に顔を向けると、そこには疲れからか、やや不機嫌そうな彼の姿があった。
< 33 / 218 >

この作品をシェア

pagetop