次期社長と甘キュン!?お試し結婚
「あ、ごめん」
「べつにかまわない」
それだけ告げると彼はキッチンに足を進める。なんだかこのままここで映画を観るのも申し訳なくなり、私はリモコンを操作した。
「観ないのか?」
ミネラルウォーターをグラスに入れて戻ってきた彼が不思議そうに尋ねてくる。なんだかあてつけみたいだっただろうか。
「よかったら一緒に観る?」
「いい。俺は映画が好きじゃないんだ」
ばっさりと切り捨てられ、私はそれ以上なにも言えなかった。自分の趣味を人に押しつけるようなことはしないが、そこまではっきり言われるとやはり、少し寂しい。
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、彼は思い出したように話題を振ってきた。
「そう言えば、俺たちのことを誰かに話したりしたか?」
「叔母が身内には喋ってるみたいだけど、私は誰にも言ってないよ。どうしたの?」
ソファ越しに後ろを向いて彼に答えると、彼はやれやれという感じでネクタイを緩めながら続けた。
「なら、内密にしておこう。関係者にバレたらお互い仕事がしづらくなるだろうし、晶子とだと、立場的に色々勘繰られて、あることないこと言われるのが目に見えてるからな」
もちろん異論はない。ただでさえ三日月朋子の姉、ということで変に注目されることも多い。彼の言い分はもっともだ。私だってその方が有難い。それなのに、なんだか彼の言い草に胸がざわついてしまった。
おかげで私はせっかく、彼とこうして顔を合わせられたのに、こんな会話しか交わすことができず、映画を途中で切り上げて、そそくさと自室に向かうことにした。
「べつにかまわない」
それだけ告げると彼はキッチンに足を進める。なんだかこのままここで映画を観るのも申し訳なくなり、私はリモコンを操作した。
「観ないのか?」
ミネラルウォーターをグラスに入れて戻ってきた彼が不思議そうに尋ねてくる。なんだかあてつけみたいだっただろうか。
「よかったら一緒に観る?」
「いい。俺は映画が好きじゃないんだ」
ばっさりと切り捨てられ、私はそれ以上なにも言えなかった。自分の趣味を人に押しつけるようなことはしないが、そこまではっきり言われるとやはり、少し寂しい。
そんな私の気持ちを知ってか知らずか、彼は思い出したように話題を振ってきた。
「そう言えば、俺たちのことを誰かに話したりしたか?」
「叔母が身内には喋ってるみたいだけど、私は誰にも言ってないよ。どうしたの?」
ソファ越しに後ろを向いて彼に答えると、彼はやれやれという感じでネクタイを緩めながら続けた。
「なら、内密にしておこう。関係者にバレたらお互い仕事がしづらくなるだろうし、晶子とだと、立場的に色々勘繰られて、あることないこと言われるのが目に見えてるからな」
もちろん異論はない。ただでさえ三日月朋子の姉、ということで変に注目されることも多い。彼の言い分はもっともだ。私だってその方が有難い。それなのに、なんだか彼の言い草に胸がざわついてしまった。
おかげで私はせっかく、彼とこうして顔を合わせられたのに、こんな会話しか交わすことができず、映画を途中で切り上げて、そそくさと自室に向かうことにした。