次期社長と甘キュン!?お試し結婚
『なんか向こうからのすごいアピールだって聞いたんだけど、晶ちゃんはそれでいいの？　ちゃんと納得してる？』

　あまりの勢いに私は苦笑してしまった。これではどっちが姉だか分からない。そんな私の反応に妹は気を悪くしたらしい。なので、ごめん、ごめんと謝りながらこれまでのことを簡単に説明した。

『ちょっと、そんなので結婚して本当に大丈夫なの？』

　さっきまでの勢いはどこへやら。妹の声はすっかり神妙になっていた。まぁ無理もない。

｢心配してくれてありがとう。でも元々結婚に対してそんなに夢も憧れもなかったから、これも経験と思って頑張ってみるよ｣

　すると電話の向こうで妹がわざとらしく大きなため息を漏らした。

『晶ちゃんはさ、なんですぐに諦めちゃうの？　いや、そうやってどんな状況でも受け入れるのは、晶ちゃんのいいところだとは思うよ？　でも、そんな自分を好きになってくれるか分からない相手を好きになりたいって、ものすごく不毛じゃない？』

｢うーん、まだ好きになれるか分からないし、それに相手の気持ちを変えるのは難しいからね。元々は朋子とお見合いしたがってたくらいだし｣

　口が滑る、とはこのことだ。完全に余計なことを言ってしまったと自覚したときにはもう遅い。沈黙が二人の間を包んで気まずい空気が流れる。
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