コミュ障なんです!


込み合う食堂で、四人が並べる席を確保するのは至難の業だ。
だから先に席をとっておいてもらえるのはありがたいといえばありがたいんだけど。


「和賀さん、こっちこっち」


勘弁してくださいって。
永屋さんみたいな目立つ人に、私みたいな地味メガネが全開笑顔で呼ばれるとそれだけで反感買うんだからさぁ。


「ねぇ、やっぱり永屋さんと何かあったんじゃないの?」


お盆をもちながら、楽しそうに私を肘でつつくのは美波ちゃん。


「そ、そんなことないよ。仕事の話をついでにしたいんだって」

「それにしたって、私のことなんかまったく見えてないみたいじゃん」


それは、山海さんに任せるべきって思っているからだよ。
普段だったら一緒にいる人全員に気を配ると思うよ、永屋さんは。

本日のAランチはサバの塩焼きだ。
一人暮らしをしているとどうしても魚が不足しがちになるので、魚の定食の日はそれを選ぶことにしている。
見ると、永屋さんもAランチで、山海さんと美波ちゃんは鳥の唐揚げのB定食だ。


「あ、一緒。和食好き? 和賀さん」

「そうですね。おいしいですよね」

「俺、焼き魚より煮魚が好きなんだよねー。今度食べたいなぁ」


ちらりとこっちを見るのはどういう意図なの。
作らないよ?
昼休みとはいえ仕事中ですよ。私情挟まない発言はどうした。

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