コミュ障なんです!

「そうですか。ところでお話とは」

「食べ終わってから話そうよ。飯がまずくなっちゃうしさー」


くっ、可愛く笑われた。永屋さんのこの顔には弱いんだよな。
何にも言えなくなって、とりあえずご飯を食べる。
そのあと、食堂は混んでいるので、自動販売機の前まで移動してコーヒーを飲みながら少し仕事の話をすることにした。

美波ちゃんと山海さんは、何か別の話で盛り上がっていたようで、私たちの会話にはあんまり入ってこない。
印刷してきた資料を出して、隣に立った永屋さんが顔を近づけてくる。
距離が近いんだよなぁ。ドキドキして落ち着かなくなるからやめてほしい。

二、三点、意味が分かりずらいと言われたけれど概ねオッケーをもらう。
これなら、メールでも済んだじゃないかっていう気がする。
睨んでやろうかと斜め上をちらりと見ると、彼の形のいい唇があって、むしろ自分のほうがドキドキした。

「今日の夜空いてる?」

ますますドキドキするようなことを、耳打ちするのも止めていただきたい。

「き、今日は早く帰りたいんです。明日ひとりで客先行くので緊張するし」

一応毅然とした態度でいったと思う。えーとか言われても絶対折れるもんかって思ったのに。

「そっか。じゃあ明日」

「え?」


あっさりと肯定されて拍子抜けする。


「頑張った成果を聞かせてもらうから。仕事終わったら電話するからね」


ポン、と肩をたたいて立ち上がり、「そろそろ戻ろうか」と山海さんに声をかける。

あまりにも自然に日常に戻られてしまって、今更その誘いにどうこう文句などつけられないこの状況。
なんか、いいように転がされてる気がするんだけど大丈夫か、私。

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