コミュ障なんです!
戻る時は自然に、男同士・女同士の組み合わせになった。
「……やっぱり永屋さんって、香澄ちゃんのこと気に入ってると思うんだけど」
ぼそりという美波ちゃんにドキリとする。
「そんなことないよ。そんなこと言ったら永屋ファンに怒られちゃうよ。大体、私なんて釣り合わないもん」
香澄じゃなくて霞に改名してもいいくらい、空気に近い女よ?
そこにいるだけで視線を浴びまくる永屋さんとなど釣り合うはずがないでしょう。
「……どうしてそう思うの?」
「え?」
美波ちゃんは心底不思議そうな顔をして続ける。
「私は、香澄ちゃん格好いいなって思う。釣り合わないって誰が決めるの? というか、香澄ちゃん自身はどうなの? 好きなの? 嫌いなの?」
そう言われて、言葉が紡げなくなる。
だって文庫本が友達のような女と、あんなイケメン営業が釣り合うわけないよね?
誰が決めるとかじゃなく自明じゃないの?
「わ、私は……」
答えようとしても尻すぼんでしまう。
私はどうしたいんだろう。
もちろん最終目的は、専業主婦になることだ。
でもそれと永屋さんと付き合うことがイコールだと思えない。
だって自立してる感じの子が好きだって言ってたじゃん。
専業主婦を夢見ているなんて言ったら、絶対嫌われ……
足が止まる。数歩先に行ってしまった美波ちゃんが、振り返って不思議そうな顔をした。
「香澄ちゃん?」
「……っ、何でもない」
唐突に、気づいてしまった。
どうして永屋さんの告白を受け入れたくないのか。
ちゃんと話したら、嫌われるに決まってるから。
――私、永屋さんに嫌われたくないんだ。