コミュ障なんです!

打ち合わせは一時間かからないくらいで無事に終了した。


「でしたら、これで仕様設計書を作成します。追ってスケジュールのほうもお送りしますね」

「はい。よろしくお願いします」


斉藤さんと梶さんに見送られて、私はトレンドハウスを出る。

話し合っているうちに、頭の中ではフローチャート図はできた。
戻って二時間も集中すれば資料はできるだろう。プログラムの組み立てもぼんやり浮かんできている。
新システムへの移行までには二ヵ月くらいもらえそうだし、開発一カ月半、テスト、実機テストでもう半月ってところだろうな。

早く形にしたいな。
人と話しているよりも、頭の中で構造を組み立てていくほうが楽しいもん。
自分の世界の中に入り込みたい。この設計図を、正しく作り上げていく過程が私は大好きだ。


「あれ、和賀さんじゃん」


聞き覚えのある声に、背筋がざわりとした。
外で会社の人と会うとか面倒くさい! 
気づかないふりをしたいけれど、名指しで呼ばれて振り向かないわけにもいかない。


「た、田中さん」


振り向くと、そこにいたのは予想通りに田中さん。


「会社戻るの? 俺もなんだよね。ちょうど昼だし、食ってから帰らない?」


彼はご機嫌だ。私が断ることなど想定していないように隣を歩き始める。


「田中さんも外回りですか?」

「俺も客先周りの途中。和賀さんは? そっちから来たとこ見るとトレンドハウス?」

「知ってるんですか?」

「永屋の担当だからね。一応ほらライバルだし?」

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