コミュ障なんです!

田中さんはキョトンとした顔で私をまじまじと見ると、「和賀さんって三浦みたいなこというねー」と言った。
まさかあんな雲の上の人と比較されるなんて思わなくて、びっくりしちゃう。


「そうですか?」

「そう。三浦は昔っからその辺がシビアでさ。怖くない? 俺、いつも怒られてる気がする」

「まあ……」


確かに怖いところもある。でも。


「三浦さんが怒ってるときは確かに私も悪いんです」


だからたぶん田中さんもだよ、という気持ちも込めて言うと、彼は自分のことを言われてるとは思わず陽気に笑う。


「できた後輩だねぇ。やっぱ和賀さん結構面白いよね」


田中さんは話通じないですよね、と思うけど。
まあこの人、私がどんな反応しようとそんなに気にしてないんだよな。
自分の言いたいこと言ってれば気が済むみたいだもんね。

途中からそれに気づいた私は、田中さんの自慢話とも思える話は徹底して聞き流すことにした。

しつこいから一緒にお昼は食べたけど、話した内容はほとんど覚えていない。
それよりも脳内で、今日の議事録を組み立ててしまおう。


「……と思わない?」

「あーはいはい」

「だよな!」


適当に返事してしまったけれど、あまりにも満面の笑みになられたのでビビる。


「あ、えと、すみません。今」

「やっぱ永屋になんか負けてらんねーわ。さ、戻ろうぜ」

「あー……はい」


何かいけないことを言ってしまっただろうか。
わからないけど、田中さんと離れられるのならありがたい。

文句は言わずに素直に従うのが、この人を遠ざける秘策なんだなとなんとなく気づいた。

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