コミュ障なんです!


一度気が引けてしまうと、その後も及び腰になるものらしい。

あの日、彼と三浦さんと何を話したか分からないけれど、それからふたりがよく廊下で話しているのを見るようになった。

その度に訳の分からないモヤモヤが私の胸を包む。
こんな気持ちになるくらいなら、いっそ永屋さんの顔、見たくない。

その気持ちは、私をより消極的にした。

その後の永屋さんからの食事の誘いも断り続け、顔もなるべく合わさないようにしていた。
そのうちに、あちらからも声がかからなくなり、顔を見かけることさえ無くなっていた。

告白されたことなんて、今から考えれば夢だったんじゃないかと思うくらい。
きっと永屋さん自身も、そこまで深い気持ちじゃなかったんだろう。
どうせ付き合ったって、専業主婦になりたいなんて言ったら嫌われちゃうんだろうから、これでいいんだ。
そう考えて納得しようとするのに、私のため息は止まらない。


代わりのように仕事には集中している。
神谷さんと川西さんとの間は、やっぱり少しギスギスしているけれど、ふたりとも仕事自体はしっかりしてくれる。ただ、進捗報告があまりないので心配にはなるんだけど。


「香澄ちゃんがリーダーなら、私やりたかったなぁ」


お昼を食べながら、美波ちゃんにトレンドハウスの案件のことを話すとそんな風に言われた。
でも美波ちゃんは、三浦さんがリーダーの別案件で忙しいのだ。こっちの仕事までは手伝ってもらうわけにはいかない。


「未久ちゃんとなっちゃんでしょ? 大丈夫? 香澄ちゃんにつっかかっていったりしてない?」


未久ちゃんと神谷さんのことで、なっちゃんとは川西奈津美さんのことだ。
美波ちゃんは、同期のほとんどと名前で呼び合うくらい社交的だ。
私とひっついていなくても、本当なら誰とでもうまくやっていける。


「うん。大丈夫」

「ふたりとも、ちょっと誤解してるんだよ。香澄ちゃんのこと」

「うん」


でも誤解じゃないよ。
私が愛想ないのも、話下手なのも本当のことだもん。
感じ悪いって思われても当然だと思う。


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