コミュ障なんです!


「ふたりは何にも悪くないよ。私が、うまく話せないだけなんだもん。それに同期がリーダーになるってやっぱり複雑な気持ちになるの、当たり前だと思う」

「香澄ちゃん」


私が相手の立場だったら、どう思うかな。
相手が、自分よりも優れている人なら納得できると思う。三浦さんみたいな人なら。

ふたりがそう思えないのは、私に不足があるからだ。
プログラムを組むのはうまくても、気配りとか説明とかが足りなさすぎる。

紙に書いて理論を整理するみたいに、声にだして話すと感情が整理されていくみたい。
今まで、友達らしい友達がいなかった私にとって、これは初めての感覚だった。

吐くだけ弱音吐いたら、なんだかすっきりしてきて、自分がどうしなきゃいけないのかも、なんとなく見えてくる。
わかるのは今のままの私じゃダメだってこと。


「私、変わりたいなぁ。ふたりとうまく話したい」

「え?」

「プログラム作るの、私好きなんだよね。でも今回はあんまり自分ではやらないようにって言われているから。頭に出来上がっているものを、ふたりにうまく説明できたらもっと全体的にスムーズにできる気がするんだよね。でも伝えられないから、うまくいかない。世間話さえできないだもん。駄目だよねぇ」


嫌だから逃げたい。
専業主婦になったら、きっと逃げられる。

そう思ったけれど、道はあまりに遠すぎて。

気が付けば、神谷さんや川西さんともうまく話せず、永屋さんとまで気まずくなってしまった。

逃げられないなら、私が変わりたい。
少なくとも引き受けてしまった仕事に関しては、もうこれ以上逃げたくない。

なんでもっと早く、こんな風に考えられなかったんだろう。

逃げ回って遠ざけてしまったチャンスを全部生かしていたならば、もっとうまく生きられる私になっていたのかもしれないのに。


「香澄ちゃん」

「頑張ってみるね、私」


仕事だもん。
せめてリーダーをしている今だけは、頑張ってみよう。
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