コミュ障なんです!
「……ヨリ戻さないの?」
永屋さんの声だ。え、ヨリって何。プライベートなお話なら聞いたら悪いかな。
戻ろうとした私の足を止めたのは、聞きなれた三浦さんの声だった。
「自分でもバカだとは思うけど」
「下にきてんだろ、梶さん」
「わかってる。行かなきゃいけないんだけど。顔見たら揺らぐ、絶対。だからお願い」
続く会話に、私の心臓まで早鐘を打ち始める。
梶さんって三浦さんと付き合ってたの? しかもヨリ戻すとか言ってるってことは別れちゃったの?
あ、でも。
言われてみたらお似合いかもしれない。
おしゃれで朗らか、アタリの柔らかい梶さんと、キツイけどはっきりした三浦さん。
プラスマイナスが相互に作用して、二人でいたらぴったりな感じ。
「……で、なんで俺なわけ」
「全く関係ないって訳じゃないでしょ。あの人、いつまでも待ってるタイプだから、とにかく帰ってもらって」
「仕方ねーなー……」
あ、やばい。
逃げようと思ったけれど、永屋さんが角から出てくるのが先だった。
「あ」
目が合って、立ちすくむ。何よりも弁解せねばという気が先に立った。
「やっ、あの、き、聞いていませんよっ」
「え、やだ和賀さん?」
私の声に、三浦さんも慌てて顔を出す。
そして私を見つめ、気まずい表情を浮かべた。
状況はますますやばくなっております。
立ち聞きしてたなんて知られたら三浦さんにも嫌われちゃうよー。