コミュ障なんです!

「ちょ、離して」

「嫌だ。ちょっとこっちおいで、和賀さん」

「私もう帰るんですってば」

「いいから。……やっぱいいわ。和賀さん」


人気のない方の角に再び引っ張りこまれて、心臓がバクバク跳ねだした。

なんだろう。なにがいいの。
私は、怒られるの褒められるの、どっち?

何をされるかびくびくしていたのに、彼は私をまじまじと見つめてほほ笑むだけ。
しびれを切らして、私のほうから口火を切った。


「……なんなんですか」

「んー? しばらく話してなかったから、顔見たかっただけ」

「は? あの」


宣言通りに、彼は私の顔をじっと見ている。

やめてください。手汗だけじゃなくて脇にも汗をかいてきた。
変なの。彼といると落ち着くような気もするのに、顔見てられるとこんなに動揺しちゃうなんて。


「み、見ないで下さいよ。緊張するんで」

「へぇ。そう?」


永屋さんは、私の顔に手を伸ばして眼鏡をひょいと持ち上げる。


「これならどう。見られてるのかもわからないんじゃない?」


確かに私はど近眼だけど、別にメガネがないと世界が真っ暗とかいうわけじゃないんですよ。


「わかりますよ。輪郭がぼやけるだけなんですからっ」

「でもこの方が、ちゃんとこっち向いてくれるよね」


永屋さんは余裕の顔で笑いながら、私の眼鏡を自分のYシャツの胸ポケットに入れてしまう。


「困らせてるなら距離置こうかなとも思ったけどさ。……俺やっぱ、君がいいなぁ」


やばい。ドキドキする。
イケメン顔近づけてこないで、心臓が壊れてしまいそう。

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