コミュ障なんです!
「あれ永屋。お前っ呼び出しておいて帰るとかどういうことだ」
「まだ三浦がいるよ。これで払っといて。あいつ落ち込んでるから、話聞いてやって」
「三浦が? そういや最近おかしいもんな。……おーい三浦、いい話があるぞ。この間の仕事、とれたんだぜ」
朗らかに三浦さんのもとに向かう田中さん。
「また無茶ぶりしてくるんじゃないでしょうね」
「今回のはすごいぞ。お前が担当しろよ。他の奴らじゃ無理なくらいデカい案件だからな」
「またアンタは人のスケジュールも聞かずに。私は忙しいのよ。ちょっとはこっちのペースとか考えなさいよね」
聞こえてくる会話は、会社でしているのとそう変わりはない。
でも三浦さんの気持ちを聞いてからだと、聞こえ方が違ってくる。
三浦さんは、田中さんから頼られることが、うれしいんだ。
だからやり遂げる。田中さんの営業成績がいい裏には、三浦さんのそんな努力があったんだ。
「彼は……営業?」
梶さんが力の抜けてしまった様子で問いかける。
「そうですね。どちらかといえば暴走気味の奴です。でも気のいいところもあるから、三浦が放っておけないって思うのも、俺は分かりますよ」
「……そうか」
なんだか急に梶さんが三歳くらい老け込んだように見える。
見るからに落ち込んでいてかける言葉が思いつかないんですけどどうしたら……。
「……なんか悪かったね。騒がせてしまって申し訳ない」
「いえ。……飲み直します? 付き合いますよ」
「そうしようかな」