コミュ障なんです!


 人を怒らせるとろくなことにならない。だから最初っから関わりあいたくないのに。


「……ですので、既存システムはこんな感じになるんですけど。こ、これを部品化することでですね。機能を追加することが容易になります」


取引先の担当者はスーツ姿の五十代。名前は斎藤さん。白髪まじりの髪はきちんと整えられていて、小綺麗な印象だ。落ち着いて理知的な瞳が、私の手元を覗き込む。

こ、声が震えてきます。

永屋さんは、あちらの営業さんにはめちゃくちゃ笑顔なのに、私には片腕をつついて説明をせっつくばかり。

やっぱり怒ってるんですよね。
なまじっか表面的には笑顔だから余計怖い。

仕方なく、私はテンパり状態ながらも何とか説明をしている。


担当者のおじさまは、大きく頷く。


「ふうん。なるほどねぇ。詳しいことはよく分からないけど、便利にはなるって感じだね」

「そうですね。今は変化の早い時代ですし、利用者も敏感です。ただ既存システムを移すよりも、部品化しておいたほうが今後細かに仕様変更を加えたいときにも、柔軟に対応できるのでは、と思います」


私の言葉をうまく拾って、説明していく永屋さん。すごいな。さっきまで何も知らなさそうだったのに、もう自分の言葉にして話してるや。


「そうだなぁ」


いい感触そうなのに、お客様はなかなかOKとは言わない。

ああなんか、もうダメなんじゃない?
大人しく機械の交換だけにすればいいんじゃないかしら。

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