コミュ障なんです!
「まだ三浦さんと田中さん、付き合ってるわけじゃなさそうですし。そりゃ元カレってことでマイナスからのスタートになりますけど、希望はないわけじゃないですよね」
「そうかな」
「好きな過去があったからこそ、三浦さんがいま冷静に梶さんのこと見れないってのは、私わかります。……ヨリを戻そうって言われても、頷けないのも当然だし。それは、待っていた期間が辛かったのならなお。……でも、明らかに三浦さん、揺れてましたし、決して梶さんのこと嫌いじゃないと思うんです。諦めたくないのなら、もう一度、過去のことは持ち出さずに一から始めればいいんじゃないでしょうか」
言いたいことがうまく言えたかはわからないんだけれど、梶さんは私をまじまじと見つめた。
「一から……?」
「そうだな。少なくとも、本気で吹っ切れているなら、あそこまで動揺しないよな」
永屋さんがフォローを入れてくれる。
そうだよ。
ここ二週間の三浦さんのダメダメ感と言ったら、目も当てられないくらいだったよ。
「……そうか。そうだね」
少し元気を取り戻して、梶さんは再び一気にビールを流し込む。
「ありがとう、ふたりとも。もう少し頑張ってみるよ」
そこから調子が上がってきたのか、男ふたりは勢いよく飲み始めた。
私は嫌な予感がしてきたので、途中からペースを落とす。
永屋さんと私、飲む、のワードが揃ったら、結末はひとつじゃん。
「じゃあ、これからもよろしく」
一台目のタクシーに梶さんが乗り、二台目のタクシーに私と永屋さんが乗る。
私の頭に寄りかかるようにして、半分寝かかっているのは永屋さん。
とりあえず、近いので先に永屋さんちに寄ることにする。
それまでに起きてくれないかなぁ。この人を三階まで運ぶの、大変なんですけど。
「もう、捨ててっちゃうぞ」
なんて、捨てれないからこんな状況になっているんだけどね。
思えば初めから、永屋さんには振り回されてばっかり。
でもこんな風にされなかったら、今でも私は毎日ひとりでいたかもしれない。
それはそれで楽なんだけど、今よりは寂しかっただろう。
寄りかかって来る彼の重さに耐えながら、疲れたなぁと目を閉じる。
車の揺れと彼の体温が、とても心地よかった。