コミュ障なんです!

動き出そうとした足を制したのは、彼の腕。
永屋さんは私の逃げ場を奪うように、両腕で囲うようにして、上から顔を近づけてくる。
踊り場の桟に背中が当たる。に、逃げ場がなくなった。


「嬉しいなぁ」

「嬉し……そんなわけないじゃないですか。私みたいなの面倒くさいですよ。今だってどうしたらいいかわからないし。ドキドキして落ち着かなくてもうヤダ」


逃げたいよ。お願いだから解放してください。


「大丈夫。ずっと一緒にいれば慣れるし」


慣れるもんか。
今だって暴れている心臓が体をぶち破りそうなくらいだよ。もういっそ倒れてしまいたい。


「好きだよ」


ここでそういうことの言うの、勘弁して。これだからもてる男はたちが悪い。

目の周りに熱が集まってくるみたいで、涙まで浮かんでくる。
テンパっちゃってわけが分からないよ。ただ、恥ずかしい。どうして私?ってしか思えない。

永屋さんは、私からの反応がお気に召さないのか、一瞬真顔になって詰め寄ってくる。


「返事は?」


近い。顔が近すぎて息がかかる。心臓が壊れてしまいそうだ。
気持ちが通じあうって幸せなはずなのに、いつも通りじゃない自分が嫌だ。
目周りが熱くて涙が出そう。のども詰まって、息が苦しい。


「……好き……です、でももうヤダ」

「えっ?」

「ど、ドキドキしすぎて死にそう……もう無理」


頭に血が上りすぎると意識は朦朧とするものなのか。
膝から崩れ落ちた私を、永屋さんは「うわっ」と叫びながら受け止めてくれた。

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