コミュ障なんです!

そのあとは、再び抱っこして部屋まで連れてきてくれて。
氷枕を当ててくれたり、いろいろと至れり尽くせり。


「うー」


飲みすぎたのかなぁ。多少セーブしていたつもりだったけど。
不思議といつもは酔いつぶれる永屋さんのほうが元気とか、あり得ないんですけど。


「大丈夫? 水飲む?」

「……はい」


ああでも、体を起き上がらせられない。

薄く目を開けてふうと息をついたら、唇が柔らかいもので塞がれた。
そして、流れ込んでくる冷たい水。

こ、これは、チューというやつでは。
それを飲み込んでいいのかもわからず、目を丸くしていると、唇が離れていく。
そこでようやく口の中のものを飲み込めた。


「今日は何もしないから、ゆっくり寝なよ」

ニコニコして言われてもさ。

今すでに何かしたよね?
なに? ちゅーとかは永屋さんにとっては日常の出来事かなんかなの?
私的には、ふぁ、ファーストキスってやつだったんですけど!


「し、知らないっ」

「え?」


不思議がる彼をしり目に、私は背中を向けて寝ることにした。

正直、ドキドキしてすぐに寝れる気なんかはしなかったけれど。
彼がいることの感じられる空間は、意外なほど居心地が悪くなく、むしろ少し安心できるくらいで、テレビや文庫本がなくても会話に困らないことに、不思議な感じがしながら目を閉じた。


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