コミュ障なんです!

考えているうちにのどが渇いてきた。
立ち上がって、足元に注意しながらキッチンまで行き、水を飲んで戻る途中で、布団を緩く上下させて寝ている永屋さんを眺める。

よく寝ているようだから、近づいても平気かな。

泥棒の気分で抜き足差し足。顔の見える位置まで来て息を詰める。

形のいい唇にすっと通った鼻。少し目にかかる長さの髪もいい感じに似合っている。ほんとイケメンだよなぁ。

どうしてこんな人が、私を好きだなんていうんだろう。
今までの人生を鑑みても、どうしても好かれることに納得がいかない。

三浦さんならわかるんだけど……。

その考えがどうしても消せない。

今地震が起きて倒れたら死ぬんじゃないかって距離にある本棚。この中に、三浦さんの写真があった。

もしかしたら勘違いされてるんじゃないかな、私に三浦さんを重ねてるんじゃないのかしら。
だったら、私、これから幻滅されるだけなんじゃない?


息が自然に抜けた。
ひとりで考えていてもろくなことにならなさそうだ。
立ち上がってベッドに戻ろうとした瞬間、布団から出てきた手に手首をつかまれた。


「きゃあっ」

「……眠れないの? 一緒に寝る?」


突然のトンデモ発言に、夜中だから静かにという考えはどこかへ飛んで行ってしまった。


「ひゃあ、いえいえいえ、滅相もない」

「そう言わないで。おいでよー」


ズルズルと布団に引っ張り込まれる。寝ぼけているくせに力強いし!
やめてください。永屋さんとひっついていたりしたら余計寝れないわ。


「あー柔らかい」


おなかのあたりをぎゅうと抱きしめられ、耳元にはそんな満足げな声が響く。
勘弁してください。私は抱き枕ではないんですよ。
そんな安心した声出されてもこっちはどうしたらいいやらです。
< 159 / 196 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop