コミュ障なんです!


 スマホのアラームが鳴る。はいはい、といつもセットしているホルダーを探そうとして手が空滑りした。
目を開けて、思い出す。そうだここは私のアパートではなかった。

鳴っているのはカバンの中か、と布団から出ようとしても硬い腕が邪魔をする。ん? 腕?


「ぎゃっ」


そして気づく。私! 永屋さんに抱きしめられてる。


「は、離して」

「んー、おはよう。もう朝?」

「そうですよっ。今日も仕事ですよ。私一度帰らないと服が」

「あー、いいじゃん一日くらい。男がいるアピールになってちょうどいい」

「よくないです。帰ります!」


時計を見ると六時。家まで戻ってではギリギリだ。


「んー。じゃあ今度は着替えも持っておいでよ。つか、置いとけばいいよ。この部屋広いし」

「え? あ、はい」


確かに、一人暮らしの割には広い部屋だよな。
バス・トイレも別だし、ワンルームは十畳。小さいながらもキッチンも分かれてるもん。

と考えているうちに五分が経過している。


「とにかく、私は帰りますから」

「気を付けて。また会社でね」


上着を着こんだ私に、彼は自分の帽子をかぶせた。


「寝癖ついてるから。これで隠していきなよ」

「は、……はいっ」


顔に熱が集まってくるのがわかる。
恥ずかしい。恥ずかしすぎるよ。

思えば無防備すぎる姿を見せてる。
世の中の恋人同士は、こんなことが平気でできるのー?
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