コミュ障なんです!


それから十五分後くらいに、梶さんと三浦さんがそろって出てきた。


「お騒がせしました」


そして私たちに向かって頭を下げる。

ホントだわ。
上司や取引先のプライベート見せられて困るったらないですよ。


「仲直りした?」


永屋さんの問いかけに、三浦さんはあいまいに笑い、梶さんは「スタートラインには立てました」と答える。
そして私に向かって、手を差し出した。


「和賀さん、いろいろありがとう」

「え、私……ですか?」

「うん。君に喝を入れてもらった。情けないところを見せちゃったけど、仕事のほうもどうぞよろしくお願いします」

「いえ、こちらこそ」


もったいないような言葉に、ためらっていた手が出て、握手した。

私の発した言葉が、誰かを動かす。
そんなこともあるんだ。こんな風に感謝されることもあるんだ。
怒らせるばかりじゃなくて。


「……私も、ありがとうございます」


誰かと係わることが怖くて堪らなかったのに、いざ踏み出してみたら、嬉しいことのほうがたくさんある。
これもすべてきっかけは永屋さんだったような気がする。

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