コミュ障なんです!
「じゃあまた来週ね」
三浦さんたちが歩き出し、残されたのは私と永屋さん。
「ちぇ、みんながどんどん香澄の良さに気づいてく」
ふてくされたような声でそっぽを向いてそういう彼が、部屋のほうに向かって歩き始めたので後をついていく。
つか、あっさり名前で呼んだな。恋人同士になったら、やっぱり呼び名はそうなのかな。
永屋さん……下の名前なんだっけ。今聞いたら確実に怒らせると思ったので、そこには触れずに会話を続ける。
「私、いいところありますか」
「俺は最初っから見つけてる」
最初っていつだよ。
酔っぱらいの世話してやったからか。
「みんな、後から見つける癖に、すぐ歩み寄ってきてずるいなー」
背中を押されて、部屋の中に入る。
冷めきったコーヒーは二つ残っていた。三浦さんと梶さんはちゃんと飲んだみたい。
きちんとマグカップを洗ってあるところがなんだか三浦さんらしい。
「……なんだけど」
「はい?」
「いい?」
「……はい?」
なんだって?
その途端に抱き着かれてビビるったらない。
「なななな、なんですか」
「いいって言ったじゃん」
「言ってない! 本当は聞こえてませんでした」
「えーだからさ」
「悔しいから、俺しか知らない香澄を見たいな」
耳元でささやかれて、顔が熱くなってくる。
こんな動じている私を知っているのはあなたくらいだと思うんですけどね!
それだけじゃダメですか!
「ダメ?」
「なにがですか?」
「分かって誤魔化してる? それとも本気で分かってない?」
分かってないわけじゃないよ。
今日は一応、そのつもりで来たしね。付き合ってからの日数は確かに短いかもだけど、永屋さんのことはそばにいると安心できるくらいに信用しているつもりだし。
ただなんていうの、口で言うのは恥ずかしいというか。
流されるだけの雰囲気作ってくださいよ。