コミュ障なんです!
エピローグ
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溶けるような夜を過ごしてから半年後。
私は今、人前式を終え笑顔花咲く新婦の背中をみつめている。


「せーの、はいっ」


後ろ向きのまま、細く白い手から投げ出された、色とりどりのラウンドブーケが宙を舞う。
そしてそれは、私の手元へと落ちてきた。


「うわ」


喜び損ねて、変な声が出ちゃった。
そしたら、周りのブーケ狙いの同僚たちににらまれた。


「アンタは別にいらないでしょうよ。相手だっているし」

「いや、結婚などしていませんよ」

「どうせ時間の問題じゃん」


そんなことは……あるかな?
ブーケの中に大好きな人の顔を思い出して、恥ずかしくなって顔を押し付ける。

そんな私を、システム開発部の仲間がにやにやしながら見ていた。


今日は山海さんと美波ちゃんの結婚式。
お付き合いから半年でのスピード結婚だ。


「僕たちのもとに、天使が舞い降りてきてくれて、結婚への後押しをしてくれました」


先ほどの結婚式での山海さんのスピーチ。
今って“出来ちゃった結婚”もこんな言い方でまとめられるんだからすごいなぁって思う。

美波ちゃんは“授かり婚”とか言ってたかな。
本人には流石に言えなかったけど、それは長い春過ぎて婚期を逃していた人が子供を授かったときに使う言葉で、ふたりのはどう考えても“出来ちゃった結婚”だと思います。
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