コミュ障なんです!
美波ちゃんがママになるなんて想像もつかないな。
幸せそうに笑う彼女を見ていると嬉しい。嬉しいんだけど……心配だ。
何せ思い込みが激しいから。マイナス方向に働かなきゃいいんだけど。
「香澄、大当たりだったな」
永屋……もとい洋斗さんが近づいてきて、私の肩越しにブーケをのぞき込む。
そうやってべたべたしてくるから周りにもあんな言われ方をするんじゃないかと思います。
「昨日、斉藤さんからメールがあったよ。今度来るときはメンテについて相談したいから香澄も連れてきてほしいって」
「ああ。そうですか」
トレンドハウスの仕事はテスト段階で重要なエラーが見つかり、納期を三日遅れて納入完了した。
怒られるかと思いながら洋斗さんと一緒に謝りに行ったら、意外にも斉藤さんと梶さんは朗らかに対応してくれた。
「いただいたメールで遅れる理由はわかりましたし、納得はできたから大丈夫ですよ。既存システムのある話ですから、こっちの運営自体には問題ありませんし。わざわざお越いただいてなんかすみません」
そう梶さんが言ったあと、ほっとした私に斉藤さんがにっこりと笑った。
「でも私は謝りに来なければ次の仕事は頼まないつもりだった」
笑顔のままだったけれど口調ははっきりしていて、私も梶さんも息をのむ。洋斗さんは慣れているのか、笑みをたたえたままだったけど。
「よく来てくれたね和賀さん。だから君を信用しようって思えるんだよ」
今まで、私がよく人を怒らせてきたのは、私が勝手に頭の中でもう駄目なんだと諦めてきたからなんだろう。
今回だってメールだけ出して逃げ出したかった。だけどそれじゃ駄目だと洋斗さんが言った。
“理由じゃなくて誠意を伝えに行くんだよ”
それが、私が今までできていなかったこと。
うまいことが言えなくても、傷つくことを言われたとしても、自分の誠意は伝えようとしなきゃ伝わらない。