コミュ障なんです!

あの時のことを思い出して、私はほっと安堵の息をついた。


「……良かったです。またお仕事もらえて」

「最近、仕事楽しくなってきたみたいだもんな」


そう。
今回のことがあって、反省した私は、トレンドギフトの仕事が終わってから、初めて打ち上げというものを主催してみたのだ。

三浦さんと神谷さんと川西さんだけを呼んだつもりだったのだけど、なぜか美波ちゃんと山海さん、洋斗さんに田中さんまで来て、最終的になんの飲み会だかわからなくなってしまったんだけど、みんな喜んでくれて、次の仕事の相談とかも、気軽にできるようになった。

今までずっと人と話すのを怖がって逃げていたけど、もったいないことをしていたんだなぁと思う。


「……だとすると、これはまだ先のほうがいいのかな」


洋斗さんがちょん、とブーケをつつく。


「え?」

「楽しくなったなら仕事していたいだろ? 香澄、専業主婦になりたいって言ってたじゃん」

「あ、あれ、……それについてはまた考えます」


専業主婦もそう甘くないってわかったしな。
少なくとも、町内会とかに振り回されるくらいなら、仕事しているほうが楽しい。


「共働きなら俺も家事頑張るよ?」

「ていうか、結婚するんですか?」

「だってブーケももらっちゃったしね。なんか、神様がそう言ってる気がするじゃん」


これはプロポーズなのか? こんなところで?
どうしてこの人はムードとか考えずにマイペースなのかな。


でもそれでもいいかななんて思う。

なにせ私、コミュ障ですもん。
人生で彼みたいな人と出会える幸運はきっともう二度とないだろうから。
ならば掴める幸せに、今回ばかりは渾身の力でしがみついてみようと思います。



【Fin.】
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