コミュ障なんです!

「和賀さんは目が悪いからわからないかもしれないけど。人の感情は案外顔に出るよ。よく観察してれば、無表情って言われる人でも少しは変化があるんだ。斉藤さんは、君の返答の後、口角が上がって、眉がずっと下がってた。だからいけると思ってもうひと押ししたんだよ」

「はあ」


なんだそれー!
そんなのわかる? 
いや常人には無理だよ。何この人、エスパーなの?


「ちなみに君はこれのせいでわかりにくいんだけど、まあ基本ずっと困ってたよね」


眼鏡がすっと外された。途端に辺りの輪郭がぼやけて、取り返そうと顔を上げるとやっぱり輪郭線のぼけた、でも笑っているとわかる永屋さんの顔と目があった。


「あ、眼鏡ない方が可愛いじゃん」


心臓が、バクンとはねた。


「そ、それは。今日はたまたまっ」

“上向きまつげを作ってみたり、ちょっと頑張ってみたから”


言わなくていい言葉が飛び出しそうで、慌てて口を押える私。

そこに、畳みかけるように永屋さんの言葉が降ってくる。


「フレーム細いのにすればいいのに。綺麗な目してるのにもったいない」

「綺麗って……」


血が、顔に集まってくる。ドキドキが半端ない……って、いやいやいや、違う。この動悸は、眼鏡を奪われたこととか、焦りを言い当てられたことによる動揺とかそういうやつだ。

そう思いこもうとしたけれど、まるでエコーのように頭に響く『可愛い』という言葉に、認めるを得なくなる。


「はは、照れてる」


永屋さんが笑う。
だから、言い当てるのやめてくださいよ。
親以外の男の人に、可愛いって言われるの初めてなんです。

たとえお世辞だとわかっていたって、……嬉しいに決まっているじゃないですか。




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