コミュ障なんです!
「無理かどうか決めるのは君じゃないよ。仕事だからね。会社としては社員は武器だ。それをどう使うかは会社が決めることであって、君本人じゃない」
にこやかな顔から放たれるのは、切っ先鋭い本質を突いた言葉。
これはちょっと……痛いかも。
分かってますよ。私がコミュ障だからと言って、仕事を断る権利なんかないってことも。
だから早く結婚して、専業主婦になりたいんじゃない。
人と会わなくても、話さなくても怒られない、そんな世界に行きたいのに。
「頼むよ、和賀さん」
断りたい。
でも、永屋さんの言葉は社会人として正しすぎた。
それを覆せるほどの理論を、私は持ち合わせていない。
助けを求めるように三浦さんを見上げたら、
「そちらのメイン担当になるなら、こっちの仕事は別の子に頼むわよ。まだ話を詰めてる段階だし、問題ないわ」
とフォローが入る。いや、そっちのフォローはいらなかった。
「でも」
「初めてのメイン担当なんだからちゃんとフォローも入れるわ。メールには必ずccに私を入れて」
「さすが三浦。後輩想い!」
「永屋くん、うるさい」
仕事のできるふたりの先輩からこんな風に言われたら、断れるほうが稀だと思うわけ。
「は……はい」
渋々といった体ではあったけれど、私は頷いた。
三浦さんはホッとしたように息をつき、永屋さんは楽しそうに「よし、じゃあ今後のプランニングについて一緒に……」とファイルを開き始めた。
そして私は誓う。
婚活しよう。
社会人なんて向いてない。
なのに年齢を重ねれば、いつまでも好きな仕事ばかりさせてはもらえない。
だったら、とっとと養ってくれる旦那様を見つけよう。