コミュ障なんです!


 斉藤さんへメールは送った。次回の打ち合わせに向けての永屋さんとの話し合いももう佳境。時刻は二十時を回ったところで、私はおなかの虫を抑えられなくなってきた。帰りたい、帰りたい。

そこへ、永屋さんの携帯が鳴る。


「あ、ごめん。でていい?」

「どうぞ」


その間に、私は広げていた書類をまとめ始めた。彼が電話を切ったら話まとめてお疲れ様でいいでしょ。

今日何食べようかなぁ。
今から帰って作るのは面倒くさいな。コンビニ弁当で我慢しようかしら。


「は? 今からかよ。あーまあ、もうすぐ終わりはするけど」


永屋さんの電話は口調からかんがみるにプライベートの話っぽい。


「途中から酔っぱらいに混ざるとか最悪じゃん。嫌だよ」

『そんなこと言うなよ。頼むって、誰か連れてきてもいいから!』


電話の向こうの声は大きい。テーブル挟んで向かいの私にまで聞こえてくる。


「大体人数が合わなくなるだろ。大丈夫なのか?」

『もともと女の子ひとり足りないし。空気悪くなっちゃってるから頼むよ』

「あー。そうだなぁ」


永屋さんの視線が私を捉える。
なんか嫌な予感がするんですけど。


「もう一人連れて行ってもいいか? 飯だけ食って途中で抜けてもいいならいいよ。腹は減ってるし」

『何でもいい! 頼む!』


永屋さんは私から視線をそらさぬまま、通話を終える。

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