コミュ障なんです!


……気まずいったらないですよ。

永屋さんに連れられて行った飲み屋。
その看板を見たときに、どこかで聞いた名前だなとは思ったの。

入って奥の小上がり席に案内されて、私は来たことを激しく後悔した。


「えっ、和賀さん?」


そこにいたのは、驚きでいっぱいの岩田さんと、あからさまに不快感をあらわにした神谷さんと川西さんのコンビ。

まーじーかー。
合コンって、社内対社内だったの?
それってただの飲み会って言わないの?


「あれ。知り合い? あ、同じ部署か」


永屋さんがにこやかな笑顔を向けると、一瞬で女子社員ふたりの顔が晴れ渡る。
おおすごい。イケメン効果ってやつ?


「同期なんです。……その、合コンなら私は帰ります」

「や、待って! せっかく来たんだもの。座って?」


逃げようとする私の腕をつかむのは、なぜか岩田さん。

え? なぜあなたが止めるの?
事情知ってるよね、私が逃げたいのわかるよね。


「でも岩田さん」

「お願い、座って。昼間本当にごめん。来てくれて嬉しいよ。一緒に話そう?」


岩田さんは私の腕にしがみつくようにして引っ張り、他の女の子たちの視線から逃れるように壁際の席を陣取った。代わりに生贄のようになったのは永屋さんで、手を引っ張られて、ふたりの女子社員の間に収まっている。
さすがエリート営業。モテモテだなぁ。

イケメンが来たからか、私には不快感があっても、彼女たちの機嫌はトータルでプラスに働いたらしい。
それには少しホッとして、息をついた。

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