コミュ障なんです!

「なぁ、岩田」


私たちの向かいの席から話しかけてくるのは、営業部の山海さん。

さっきの電話の主もこの人だったよね。
岩田さんは、山海さんと目が合うとすぐさま口を開く。


「山海さん、和賀さんの飲み物注文してもらえませんか? 何飲む? とりあえずビール? それともカクテル?」

「あ、あの、お茶で」

「あーグラスあるよ。ほら、とりあえず、はいどーぞ」


山海さんにグラスを持たされて、その場にあった瓶ビールがつがれる。

いやいや待って。私お酒はそんなに……。


「はい乾杯。永屋さんと一緒だったってことはお仕事だったんでしょ? お疲れさま」


隣に座っている岩田さんが自分のグラスと合わせる。岩田さんはビールを飲んでいたらしく、泡ののった黄色の液体がグラスの中で揺れた。ビールって色は綺麗だよね。


「ほら、飲んで。おつまみもあるよ」


なんだか岩田さんがかいがいしくて、新妻のようだ。いやでも私、お茶が欲しいんですけど。


「あ、あの」

「昼間、ごめんね」


しんみりと言い出した岩田さんはグイッとグラスを開けた。
ぷはーって言って口をぬぐうとか、景気づけの酒みたいになってるけど大丈夫なの?

すかさず彼女のグラスにビールをつぐのは山海さん。

なんなんだ、これ。
私、まったく状況が理解できませんが!

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