コミュ障なんです!
心の中だけで岩田さんに反論しながら、喉の渇きに耐えられなくなって、グラスに口をつけてしまった。
苦い。まずい。やっぱりビール嫌い。
よく『この一杯のために生きてる』とかいうけれど、仕事後のご褒美がこれしかないなら、私は死を選ぶ。
「あのね。私、……私。和賀さんと友達になりたいんだよっ」
なぜか両手を握られて、一世一代の告白みたいなことを、女の子からされた。
普段は飲まないビールのせいで、顔も熱い。
岩田さんは目をキラキラさせてそんな私を見ている。
……いや、怖いって。
誤解しないで? 私、そっちの気はありませんよ?
「と、友達ってか。同期じゃないですか」
「あ、そうだよね。もともと友達だよね。でも私、もっと仲良くなりたくて」
通じていない。
入社して五年。岩田さんってこんなに思い込みの激しい人だったのか。初めて知った。
「休みの日とか、今度一緒に遊びに行かない?」
行きません。
はっきり言いたい。
でも、傷つけない断り方がわからない。
昔から人と話すのは苦手で会話は最小限だった私。
こんな風に人から好意的に誘われることはほとんどなく、ゆえに断り方もわからない。