コミュ障なんです!
「絡みたくもなるだろうよ」
そこから、田中さんは遠巻きに愚痴り始めた。
どうも要約すると、目当ての女の子たちに冷たくされ、永屋さんが来たら掌を返したように元気になられ傷ついたところに加え、まるで譲ってやるとばかりに永屋さんが席を離れたことが気に入らないらしい。
それだけのことを話すのに十分以上。営業のトークってこんなに回りくどいの?
会話を長く続けるスキルはすごいなって思うけど、ぶっちゃけ面倒くさいよ。
「大体、お前がいつまでもひとりもんでいるから悪いんだよな。不自由してないんだろうしさ、とっとと彼女作れよ」
「田中、飲みすぎだぞ?」
「全然だよ。飲んでも飲んでも酔えねぇっての」
テーブルの逆端で一体どんな扱いを受けていたのか知らないけど、この絡み方はどんな人でも嫌がるんじゃないかな。
そりゃ空気も険悪になるっていうの。
「ほら、彼女も飲んで!」
「あー分かった分かった。ほら注げ」
私に差し出されるビールの瓶を、永屋さんが受けてくれる。
助かるけど、この人もなんかすごーく顔が赤くなってきたんだけど。
「彼女さっきから全然飲んでないじゃん。俺の酒が飲めないっての?」
彼女彼女ってうるさいよ。
人の名前くらい覚えるか、わからないなら聞けばどうなの。