コミュ障なんです!
私もだいぶんイライラしていた。立ち上がり、冷たい声を出してしまう。
「飲めません。さっきっから黙って聞いてたら、何でも永屋さんが悪いみたい。永屋さんがいなかったら田中さんに彼女出来るんですか? そんなことありませんよね」
「なっ」
田中さんの顔から色が抜ける。
あ、しまった、言い過ぎたと思ったときには遅し。
座は一気に白けてしまった。
いや、一人だけは例外がいる。岩田さんはますます目をキラキラさせて私を見ている。
いやでも、これは……やっちゃったよね。
いつもの空気読まない発言、すみません。
やっぱりこういう席には来ないほうがよかった。
「……私帰ります。お金、後で請求してください」
困ったときは逃げる。これ、コミュ障の鉄則。
私は急いでカバンを抱えて、店から飛び出した。
あー心臓バクバクする。予想外なことがありすぎだって。
しかも珍しくビールなんて飲んだから、なんとなく視界がふらついて走れない。
いつもの通勤路なのに、なんか駅までが遠く感じる。
「待って、和賀さん」
突然手首を掴まれた。強い力に驚いて、思わず「ひいっ」と悲鳴を上げる。
いやでも既視感ありまくり。私今日こんな感じで何回も捕獲された。
「永屋さん」
振り向けば、やっぱり永屋さん。
彼は息を切らせて私の手を引っ張る。力が強くて歩き出せないんですけど。