コミュ障なんです!
「まあちょっと褒めてよ」
こ、困ります。
褒めるって何。何を褒めればいいの。
「褒めるって、えっと」
「ほらほら」
とても楽しそうな永屋さん。
この酔っ払いめ。この人、酔うと子供っぽくなるタイプの人なんだな?
考えあぐねた結果、私はようやく一つの言葉を絞り出した。
「えっと、た、助けてくれてありがとう……ございます?」
途端に満面の笑みになる永屋さん。
「よくできました」
頭撫でられてもさぁ。
いやいや、助けてなんて頼んでない……てか、この席に無理やり引っ張り込んだのあなたじゃないか。
そして次の瞬間、彼の体がズシリと重くなった。
「ちょ、永屋さん?」
「んー、眠い」
本気だ。そう分かるくらいに容赦なく重い。
ただ寄りかかるだけとは明らかに違う。
「ちょっと、寝ないでくださいよ。家は? タクシー拾いますかっ」
「んー。あはは。んー。そうだねぇ……」
もはや言葉は途切れ途切れ。
寝落ち寸前じゃないですか。
「寝ないで! あ、タクシー。こっちですー!」
通り過ぎるタクシーは無情にも乗車中。
その後ようやく空車のタクシーを見つけたころには、彼はすでに深い眠りに落ちてしまっていたのです。