コミュ障なんです!

「やった。目玉焼きあるじゃん。和賀さん、塩コショウ派?」

「そうですね。実家は醤油でしたが、私はこっちのほうが好きで」

「俺んちは、塩だけだった。でもコショウもついてる方が旨いね」


永屋さんが話す人だからか、なんとなく会話が続いている気がする。
その点は助かるかな。ふたりでいてシーンとしたときの気まずさってホント辛いから。
テレビもつけてなかったなぁなんて、「ごちそうさま」と言う時になって気づいた。


「茶碗、俺が洗うよ」

「いいですよ。そろそろ戻らないと会社に遅れますよ」

「シャワーも貸してもらったし、Yシャツとスーツ替えるだけだから大丈夫」


でもね、知らない人に台所を触られるのってなんか苦手なんですよ。
じとっとした目で見ていたら、空気を感じ取ったのか、「じゃあ借りにしておく」と言った。


「いいです。気を付けてお帰りください」

「あ。それと昨日のタクシー代、いくらだった?」

「それも別にいいです。飲み代のほう、おごってもらったし。それより、うちに泊まったとか、会社で言わないでくださいよ?」

「なんで? 駄目?」

「当たり前でしょう」


自分が人気あるって自覚ないのか?
誤解されるのとかまっぴらなんですけど。


「そっか。残念」


残念? なんで?
本気で分からない私の頭をくしゃくしゃっと撫でると、永屋さんはご機嫌のまま私の眼鏡を取る。

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