コミュ障なんです!
 
「香澄ちゃん、家では何してるの?」

「何って……テレビみてるとか、本読んでるとか」

「ああ、よく本読んでるよね。好きなんだ? どういうの読むの?」

「ミステリーが多いですかね。昔からのシリーズものとか」

「おすすめある?」


岩田さん……もとい、美波ちゃんは人に話題を振るのが上手なのかもしれない。
基本質問されるから答える、という動作しかしていないけれど、結構会話が続いている気がする。

他人が読んでる本が何なのかとか、私的にはどうでもいいと思っていたんだけど、そういうことを聞くだけで会話って繋がるものなのね。

普段誰とも話さずに食事をとっているから、食べると話すを両立することが私は苦手だ。
いつの間にか美波ちゃんのほうが食べ終わっていて、焦り始めるも、話しかけられるから食べられない。


「隣、いい?」


私の隣の席が空いたと同時に、声をかけられる。この声は聞き覚えがありますよ?


「永屋さん、お昼今から……」


ですか? と続けて聞こうとして、彼の持っているのが自販機のカップコーヒーだけだったので口をつぐんだ。


「昨日、悪かったね。ありがとう」

「……いえ。今日外回りじゃなかったんですか?」

「午前中ね。さっき帰ってきたとこ」


美波ちゃんの前で迂闊なこと言われたら困るなーって思うと落ち着かない。

つい気になってちらちら横顔を見てしまう私に、彼は笑顔を向け飄々としたままコーヒーを飲んでいる。
……何しに来たんだ?

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