コミュ障なんです!
「着替えだけ貸してもらえませんか」
「うん。ちょっと待ってて」
中に向かっていく永屋さんの服も濡れてるから、廊下が水浸しになっていく。
ちょっとして戻ってきた彼は早々に着替えたのかジャージにTシャツ姿だ。
手には、もう一組Tシャツとジャージがある。
「ごめん、そういえば、その」
あ、気付いた?
そうなんですよ。男女だと下着の貸し借りができませんよね。
「いいですよ。厚着すれば見えないんで」
「コインランドリーで乾かしてこようか」
「永屋さん、女のパンツ洗う気ですか」
言ったら真っ赤になられてしまった。
だよね。女が男のパンツ洗うより恥ずかしいと思うの。
「中はそんなに濡れてないので。少し乾かせば大丈夫だと思います」
まあでも、どこに干すのよって感じだけど。
「ドライヤー使う? 部屋に衝立あるから、見えないとこに干してもらってもいいけど」
「あ、それは助かります」
衝立があるワンルームってどんな部屋だ。
とは思ったけれど、だらだら話していたら本当に寒くなってきた。
「……クシャン」
くしゃみが一発出たのと同時、永屋さんは私からカバンを奪い取り、バスルームへと追いやった。
あ、永屋さんちトイレとお風呂別なんだ。いいなー。
お湯を張ったわけじゃないからひんやりしているけど、清潔な浴槽は印象いい。
知らない浴室は落ち着かないけれど。さすがにこれだけ濡れると気持ちは悪い。
服を脱いで、温かいお湯を浴びる。
ああ、生き返るなぁ。
何を呑気な、と言われればそうなんだけど。
私は前回のお礼と言う言葉を信じ込んでいたので、今の状況に疑問を持たなかった。
彼がやたらに私を引き留めたことも、理由があるなんて思わなかったのだ。