コミュ障なんです!


小さいけれど洗面台もついた脱衣所があり、シャワーを終えた私は、そこの棚にあるバスタオルを勝手に拝借した。

ブカブカのジャージも裾を折りまくれば、なんとか着れる。
永屋さんの服は、ぶっちゃけ私には大きすぎたけれど仕方ない。

髪を乾かしたいけれど、余り時間をかけては永屋さんが風邪をひいてしまう。
洗面台からドライヤーを抜き取り、浴室を出た。


「永屋さん、ありがとうございました。ドライヤーこっちの部屋で使っていいですか?」

「早いね。ちゃんとあったまったの」

「大丈夫ですよ。永屋さんこそ、早く入ってください」

「じゃあ、入ってくる」


永屋さんが浴室に消えたのを確認してから、ドライヤーで下着と髪を乾かす。
幸い、下着は湿り気を帯びたくらいで済んだので、すぐに乾きそうだ。
さすがにね、独身男性の部屋に干すとかちょっと無いわ。

そこでふと、気付く。
独身の男の人の部屋なんだよね。

改めて、私は部屋の中を見回す。
よくよく見ると、独り暮らしにしては豪華な部屋だなぁ。

十畳くらいある広い部屋は衝立で半分に仕切られている。窓際にグリーンのカーテン、ブラックのローベッドにグレーのカバーがかけられたきちんと整えられたベッド。ベッドサイドに小さな棚があって、スマホをセットして音楽が聴けるタイプのスピーカーがおいてある、いかにも休むためのスペース。

対して衝立の手前側は、お仕事っぽいスペースだ。パイプ製の簡素な机にはボールペンや付せんが転がっていて、壁にある本棚にはぎっちり本が詰まっている。床にも本や脱いだ服が散らばっていた。

女の子の友達の家に上がったことさえ、小学校以来ないというのに、男の人の部屋に私が上がる日が来るなんてなぁ。

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