コミュ障なんです!
そして本棚を見ていると、ちょっと人となりが分かる。永屋さんは、読書家なんだな。
営業さんらしく経済書もあるけど、意外にも歴史の本もある。あと漫画は結構長編物が何十巻も並んでいて、これは親近感湧くかも。
私は普段文庫派なので、ハードカバーの本を触るのは久しぶりだ。
ちょっと嬉しくなってぺらぺらとページをめくる。
すると、ほんの合間から一枚の写真がひらりと落ちた。
「……え」
拾い上げて硬直する。
背景は海。麦わら帽子をかぶった女性がこちらに向かって笑いかけている。
とてもリラックスしたいい笑顔だ。きっと映す相手を全面的に信頼しているんだと思えるような。
普段とは似ても似つかぬ、満面の笑顔。
「……三浦さん」
何度か瞬きして見直す。裏をめくっても見た。
でも間違いなく、これは永屋さんの本で、この写真に写っているのは私の上司の三浦葉菜さん。
「……あ、そういうこと」
昔付き合ってたとかそういうやつ?
いや、隠し持ってるところを見れば、まだ好きなのか? 永屋さんは。
落ち着かなくて胸に手を当てる。
熱があるんじゃないかってくらい脈が速くなってきた。なんだろ、この、変な感じ。
胸の中に、黒い空洞ができたみたいな。
「あー、あったまった」
浴室から、永屋さんが出てくる。私は慌てて写真を挟んで本を閉じ、本棚にもどす。
「和賀さん、寒くない……って」
「……あっ」
永屋さんの視線は足元に落ちていた私の下着にくぎ付けになっている。
しまったー!
お風呂から戻ってくる前に着がえちゃおうと思っていたのに、本に夢中になってしまった。