コミュ障なんです!
トイレを出てすぐ、決然と告げる。
「帰ります」
「こんな遅くに帰せないよ。和賀さんが出ていくっていうなら、俺が今日は外で寝る。ベッド使って」
永屋さんはそっけなく言うと上着を羽織って部屋から出ようとしたので、私は慌てて止めた。
「おかしなこと言わないでくださいよ。家主追い出してどうするんですか。それに、永屋さんまだ顔色悪いですし。とっとと寝てください」
「そう思うなら」
ぐい、と手を掴まれる。顔が近い。なんでこの人は人のパーソナルスペースに自然に入ってくるの。
「ここにいてよ。俺、明日の朝、和賀さんの味噌汁、飲みたい」
「は?」
「この間のスゲー旨かったし」
にかっと笑われる。愛嬌のある顔には、先ほどまでのそっけなくすら思えた感じは微塵もなく、さっきの出ていくアピールはカモフラージュだったんじゃないの、と思わせるほど。
「まさかそのために引っ張り込んだんじゃないでしょうね」
「それだけじゃないけど」
信じられないな。味噌汁くらい自分で作れよ。
「……永屋さんの好きな人に誤解されますよ」
思わず口走ってしまって、慌てて抑えると、彼は目を眇めて私に近づいてくる。
「されないよ」
「されますって」