コミュ障なんです!


デスクに戻って、一心不乱にキーボードを打つ。と、スマホのメール着信音がして、私は手を止めた。

【さっきはホントごめん。みんな悪気があったわけじゃないから。もしよかったら来て?】

岩田さんからだ。

気遣いができる人ってこういう人のことを言うんだなぁって素直に感心してしまう。
あんなに気まずい状態になったら、私ならもう関わらないな。
なのに岩田さんってば、こんなフォローまで入れてくれるなんてすごい。

ありがとう。でも行きませんよ。
私が行って、あなたに恥をかかせるわけにはいきません。

【ありがとう。でも結構です】

返事を書いて、私はスマホをカバンにしまい込んだ。そこにあるとついつい気になっちゃうもの。

それよりも仕事しよう。

仕様書が入っているファイルを引っ張り出す。

私の仕事は、Webを使ったシステムの構築。
主にクライアントのところへはシステムエンジニアさんと営業さんとで話を詰めてきて、設計仕様書を作る。
その仕様書に基づいて、プログラミングするのが私の担当だ。
一応、肩書はプログラマーということになっているけど、もう五年以上やっているから、最近は客先との話し合いに混ぜられることもある。
会社としてはいずれシステムエンジニアとして一本立ちをしてほしいのだろうだけど……。

――無理です、よ。

お客様と話して内容をまとめるなんて、そんなのコミュ障にできるわけないじゃないですか。

私はただ、言われたものを言われたとおりに動くプログラムを作る。それが向いてると思ってるし、それ以上ができるようになりたくもないんです。

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